2020.02.07
【持田陽平さん、浅見優子さん、小林美保さん】
子どもの医療費補助や第3子以降の全ての子どもの保育料無償化など、子育てしやすい環境づくりに力を入れている深谷市。
市内には16か所の「子育て支援センター」があり、地域全体で子どもを育てるための取り組みを行っている。
公立保育園4園のうちの3園に併設されている「子育て支援センター」で保育士として働く、職員の方々を訪ねた。
小林先生:ご自宅で子育てをされているお母さん、お父さんや育児に不安や悩みを抱えている方が気軽に来て、子どもと遊べたり、保育士に相談できたりする場を作っています。
初めての育児に困ったり戸惑ったりすることがあっても、身近に頼れる人がいないと悩みを抱えたまま家にこもらざるを得ないということもあると思うんです。でも、センターに来て下されば私たち保育士がその悩みに寄り添うこともできますし、同じ月齢のお子さんを持つお母さん同士で気軽にお話しすることもできます。お母さん同士が繋がって情報交換し合ったりして、子育てのヒントを得る場としても活用して頂いています。
浅見先生:親子向けのコンサートや「わくわく教室」での製作などの遊びのイベントも積極的に開催しているので、地域内外から様々な方がいらっしゃいます。
お子さんが 2 歳くらいになってくると動きが活発になってお母さん一人で一日中遊ばせるのは大変なので、午前中は市内の緑豊かな公園や野原で目一杯遊ばせて、午後はセンターに来て大人の目が届く環境で子どもを自由に遊ばせながらお母さんはほっと一息つくとか、上手く活用して下さっている方もいらっしゃいます。
あとは、遠くから全く知らない土地に引っ越して来たという方も結構いらっしゃいますね。深谷に越してきたばかりでどこに何があるか分からなくて、ようやく少し落ち着いてきたかなという時に来て下さって、もっと早くここに来れば良かったとおっしゃる方は多いです。
どんな理由で来られた方も、同じくらいの年齢のお子さんを持つ親同士なので、すぐに馴染んでいると思います。
持田先生:どんな相談内容だとしても、話しているお父さん、お母さんの気持ちに寄り添って共感するというのはとても大切にしています。
私自身も子育てをしていて、子どもがまだ小さいうちは毎日大変だったので、相談に来られる保護者の方々が抱えている悩みが実体験として分かることも多いんですよね。だから、そうですよね、分かりますという感じでいつもお話を聞いています。
小林先生:主に子どもの成長を見守れるのは、お父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんとか一番身近な家族だと思いますが、支援センターによく通って下さるご家族のお子さんに関しては、私たちも一緒にその成長を見守れるんです。
ああ、大きくなったなというのをそばで感じられるので、私もその子のご家族と一緒に成長を喜べる時、とてもやりがいのある仕事だなと感じますね。
持田先生:センター勤務になる前は保育園で働いていたんですが、男性なので4、5歳のクラスを担任することが多かったんです。でもセンターでは、0~2歳くらいの小さい子を見ることが多くて。その子たちの保育に携われるだけで自分にとっては新鮮だし、何よりも子どもたちのかわいさがもっと頑張ろうという気持ちに繋がっています。
浅見先生:保護者の方が来られて私たち職員の顔を見ると、何か話したい、話を聞いて欲しいという感じでとても頼りにして下さっているのが伝わってくるんですよね。そういう時には保育士としてずっと働いてきたことや自分自身の子育てとか、今まで経験して来たことを全部ヒントにして答えるようにしています。保護者の方が満足してくれた時にはやりがいを感じますね。
浅見先生:センターにいる時は恥ずかしがって私とお話しできない子がいても、その子のお母さんから『家に帰ってから今日浅見先生がこんなお話ししてたとか、こんなことをしてくれたとか、いつも楽しそうにお話ししてくれるんですよ』と聞くと、凄く嬉しいです。
面と向かってはなかななお話しできなくても、子どもたちと心が通い合ったんだなと感じます。
小林先生:赤ちゃんには人見知りの時期があって。知らない人が近くに来ると泣き出してしまったり、お母さんに張り付いて離れなかったりすることがあるんですが、お母さんはもちろん、私たち職員にも大丈夫という反応をしてくれると嬉しいですね。
他のお母さんが来ると急に泣いて逃げ出してしまったりする子でも、そういう時にお母さんよりも職員の方が近くにいると私たちの方に寄って来てくれたりするんです。赤ちゃんが一生懸命ハイハイして来て、膝の上にぴとって張り付いてくれたりすると、何とも言えない幸せな気持ちになります。
何度か通っていただいて一緒に過ごす中で、まだ幼い赤ちゃんなりにこの人は知っている人、大丈夫な人と認識してくれたのかなと思うと、やっぱり嬉しい気持ちになりますね。
持田先生:まだ喋れないお子さんは、最初は男性には怖がって近づこうとしない子もいるんです。だから、私も影に隠れてだんだん近づいて姿を見せるようにしていったり。でもだんだん慣れてくると、センターから帰る時に、必ず最後にてくてく寄って来てタッチしてくれるようになったりするんですよね。
顔を合わせるうちに、少しずつ心を許してくれるようになってきたんだなと思うと、そういうことだけでもすごく嬉しいです。
浅見先生:つい先日の事なのですが、子育てに行き詰まりを感じているというお母さんがいらっしゃって。最初に来られた時は、高齢出産を経験して初めての育児で、身近に誰も相談できる人もいなくてどうすればいいか分からないと、センターに着くなり涙が溢れてしまうような状況の方だったんです。
そういう雰囲気のお母さんだったんですが、私と一緒に相談対応をしている先生もベテランの保育士さんなので、お母さんが抱えている不安や悩みを二人でじっくり聞いて、心の中に溜っているものを全部吐き出してもらって。何度かセンターに通っていただくうちに、すごくいい笑顔を見せて下さるようになったんです。
そういうお母さんを見ると、『ああ、やっぱり自分はここでこういう仕事をしていて良かったな』と。子育て支援センターが地域にあることの意義や、自分がここで仕事をしていることの意義を感じることができますね。
小林先生:ご主人のお仕事の関係で、今年の秋に深谷から他地域に転居された方がいらっしゃって。 2 歳のお子さんとお母さんだったんですが、お子さんが生後半年になる頃から通って下さっている方だったんです。
最初にセンターに来られた時は、お母さんも初めての子育てで毎日何をしたら良いか分からないし、家事と育児の両立にすごく困っているとおっしゃっていたんですけど、私たち保育士や他のお母さんたちと話したり、その子が歩けるようになった時も他のお母さんたちもみんなで喜んだりして。自分の子どもだけではなくて、他のお子さんの成長もみんなで一緒に喜び合える環境の中で、だんだんと自分の子を見守ってくれる人は自分だけではないと感じて下さっていたようなんです。
引っ越しの当日に、仲良くなったお母さんと子どもたちみんなが支援センターに集まって下さり、その親子と涙ながらに手を振って見送りました。そのお母さんから、『ここまで来られたのも、先生やお友達のお母さんと巡り合えたのも、支援センターがあったおかげです』と、感謝の意を綴ったとっても素敵なお手紙を頂いたんです。その時はやっぱり、センターがあることの意義ってこういうことなのかなと感じました。
持田先生:私は男性保育士なので、最初はママたちから相談を受けた時にどんな風に受け答えすれば良いのか不安に思っていたんですが、この4月にセンターに配属されてから、パパが小さなお子さんを連れてセンターに遊びに来てくれることがすごく増えたんです。
父親として育児に参加したいという気持ちはあるけど、小さな赤ちゃんを前にどう接すればいいか、何をすればいいのか分からないというお父さんも本当は多いんです。
センターのおもちゃは誰でも自由に遊べるんですが、試しに私が遊んでみると『ああ、そうやるんですね。家でもこうやって遊んでみます』と言ってくれたりして。今では、土曜日は毎週パパが来てくれるくらい定着してきているので、男性保育士がいることで、お父さんたちにとっても来やすい場所になっているのかなと思います。
もし、子育ての悩みを抱えているお父さんがいらっしゃったら、他のお母さんや女性の先生方に囲まれて緊張したりしなくていい場所だと思って、気軽に来ていただきたいです。
小林先生:深谷市にお住まいの方だけが参加できるものから、市外の方も広く参加できるイベントまで様々開催しています。おはなし教室とわくわく教室は毎週開催していますね。教室は季節に合わせて、夏はプールを行ったり、寒い時期は製作とか折り紙とか室内でできる遊びをしたり、年間を通して楽しんで頂けるように工夫してます。
浅見先生:頻繁にイベントをしているのは、定期的にセンターに来て欲しいという気持ちの他に、お母さんたちに子育てのヒントを得て欲しいという気持ちも大きいんです。こんな遊びがあるんだとか、こんな風に遊ばせると子どもが喜ぶんだとか、そういう発見を得て、ご家庭でも上手く取り入れてもらえたらと思います。
持田先生:センターでは、歌とか手遊びもやっているんですが、保育園にお子さんを通わせていないご家庭だと、そういうことに触れられる機会もなかなか少ないと思うんです。保育園で習うようなことをセンターに来て下されば体験できるので、センターを活用する一つのきっかけにしていただけたら嬉しいですね。
持田先生:毎週イベントを開催しているので、それを進めていくのは大変かなと思うこともあります。特に音楽コンサートは親子合わせて100人くらいいらっしゃるので、その対応だけでも結構大変だったりするんですが、イベントが終わった後に子ども達が喜んで帰って行く姿がすごく嬉しくて。そのためなら頑張ろうと思えますね。
浅見先生:取り組む事業が初めての時は、一回一回ドキドキしながらやっています。昨年の実績を見て、今回もそれと同じくらいの満足度にできるかなという不安があったりするので、終わった後はほっとします。私も、楽しかったと言って下さるのが一番嬉しいので、そういう感想を頂けるとまた頑張ろうという気持ちになります。
小林先生:やることがたくさんあるので、企画、運営、実施、反省を日々繰り返して一つ一つ行っている感じですね。でも、やっぱりお母さんたちが楽しかったですと言って下さったり、子どもたちがニコニコして帰って行くのを見ると、ああ、やって良かったなと思いますね。
小林先生:ママサークルは、毎年 6 月に立ち上げて 1 年間活動するんですが、最初の日は私たちもどんな方が来られるか分からないから、ドキドキしながら顔合わせをします。参加されるお母さん同士も初対面なので、初日はただならぬ緊張感があって。
正直、最初は初めて会う人同士で仲良くなれるのかなと不安に思うこともありました。それでも、定期的に顔を合わせていくと、同じサークルのママ同士もだんだん仲良くなり、みんなで子どもを連れてランチに行きましたとか、公園に遊びに行ってきましたというお話しが聞けたりします。
これを最初のきっかけにママ友を作り始めるお母さんもいらっしゃいますし、何より同じ年齢の子どもを介して交流して行くうちに、お母さんたちの輪が広がっていくんです。そういう姿を見ていると、やっぱりやって良かったと思いますよね。
小林先生:保護者の方々からは小児科がある病院の数も多いと聞いていますし、子育て支援センターの他にも、保健センターや各教育関連施設で様々な子育て支援事業を行っていますし、地域のみんなで子育てできるような体制は整っていると思います。
都会過ぎず、田舎過ぎず、のどかなところがまだ残っているので、子どもたちにとっても過ごしやすいのではないかなと思いますね。
浅見先生:保育園でお散歩に出掛ける度、すれ違う地域の方々に『こんにちは~』と挨拶すると、『こんにちは~』と気軽に返してくれるんです。そういうことは都会でもあると思うんですが、地域の方からも気軽に声を掛けてくれて、子どもたちの方からも『こんにちは~』と自然に出てくる感じは、やっぱりのどかな農村地帯の良さなのかなと思います。
持田先生:保育園の5歳児クラスの散歩で小学校の側を通りがかったら、その小学校の校長先生が出てきてくれて、『小学校の遊具で自由に遊んでいいよ』と声を掛けてくれたんです。『小学校に来たら遊ぶんだから、今のうちに練習で遊んでおきな~』と気軽に接して下さって。そんな風に、子どもたちがどうしたら喜ぶかと気にかけて下さる方が深谷には多いのかなと感じています。
持田先生:やっぱり、元気な子に育って欲しいということに尽きますね。
浅見先生:そうですね、それに尽きますね。たくさんお勉強をさせたいというお母さんもいらっしゃるんですが、あまりそっちに偏り過ぎずに。
小林先生:子どもたちらしく、元気に伸び伸びすくすくと育ってもらえたらと思います。
子育ては、命を育む喜びを教えてくれる一方で、親としての覚悟を試すように様々な悩みや戸惑い、不安も生み出す。
それでも、子どもの成長を共に喜んでくれる人と出会えると、子育ての喜びは何倍にも増え、抱えていた不安や孤独は少しずつ和らいでいく。
新しい土地での子育てに不安を抱えている方は、深谷には、育児の悩みにそっと寄り添い、 子どもたちの幸せを共に見つめようとしてくれる人がすぐそばにいることを思い出して欲しい。
子育てが孤独にならない街は、子どもを育てることの喜びと、人と人が支え合うことのあたたかさを、何度でも教えてくれる。
(文:高田裕美 写真:矢野航 写真提供:子育て支援センター)
<子育て支援センターに行きたい方へ>
深谷市子育て支援センター:
http://www.city.fukaya.saitama.jp/soshiki/kodomomirai/hoiku/tanto/shiencenter/1391688209263.html
<深谷市で子育てしたい方へ>
深谷市魅力発信ポータルサイト「まるっと深谷ガイド」
深谷で「育てる」魅力:https://www.fukkachan.com/kurasu/k01.html