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まもる(インタビュー②)

2020.02.06

安心安全な街づくりのために|深谷市交通安全母の会

【田口夏子さん】



子どもからお年寄りまで

全国での交通事故による死者数が年間16,000人を超え、多くの命が失われた1970年代。

命を奪う交通事故から幼い子どもたちを守ろうと母親が立ち上がり、全国規模で組織されたのが「交通安全母の会」だ。(以下「母の会」という。)

その後、道路交通環境が整備されたことや車の安全性能の向上、シートベルト着用の義務化や飲酒運転に対する罰則強化などを背景に、交通事故による死者数は減り続け、2019年には年間3,215人と過去最少人数を記録している。

時代の変化に伴い、次第に「母の会」の活動を縮小させる地域もある中で、深谷市では「母の会」が警察や市役所と連携し、その活動範囲を広げながら地域全体の安心安全を守る活動を行っている。

深谷市の「母の会」会長を務める、田口夏子さんを訪ねた。

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深谷市の「母の会」のメンバーは、一般会員とPTAの協力者を含め、全部で130名前後。

活動は年間を通じて行われ、その範囲と対象は多岐に渡る。

「4月中旬から6月末までは市内の小学校(19校)を周り、1,3,4年生向け交通安全教室の手伝いをしています。また、8月に開催する親子交通安全研修日帰り旅行では、埼玉県警や白バイ機動隊の活動を見学し、交通安全への理解を深め、母の会や交通安全ボランティアに興味を持ってもらえるようなきっかけ作りをしています」

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「それから、9月には交通安全啓発知事メッセージの伝達式があります。知事からのメッセージを私から市長に直接お渡しします。毎年11月に開催される深谷市産業祭ではブースを一つお借りして啓発品の配布や手作り品の販売をしています。その時に交通遺児募金も皆さんにお願いして、グッズの売り上げの一部と一緒に埼玉県交通安全対策協議会へ寄付しています」

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「その他にも春夏秋冬、各シーズンの交通安全運動期間に合わせて街頭キャンペーンや、大型の商業施設を借りての交通安全の啓発活動を実施しています。また、定期的に『母の会』主催で地域の方々向けに講習会をしたり、PTAのお母さんやお父さんにも協力していただいて地域の家庭訪問をしたりしているので、地域の皆さんと一緒に毎月何かしらの活動をしています」

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地域の付き合いで「母の会」に参加するようになり、30年以上活動を続けてきたという田口さん。当初は交通安全に対して特別な関心があった訳ではなかったが、深谷をより良い地域にするために自分にできる事があれば、と続けて行くうちに、やりがいを感じるようになっていった。

「色々な交通事故防止の啓発運動をしていますが、どの活動も地域内外の方々と触れ合えるから、私自身がとても楽しいんですよね。小学校4年生向けの交通安全教室では、自転車のルールを学んでもらうために筆記試験と実技試験をして、合格した子には『自転車免許証』を発行するんですが、一生懸命勉強して初めて免許証を手にした子どもたちはすごく喜んでくれるんです。その姿がとってもかわいくて」

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「講習会や街頭キャンペーンの時には、様々な世代の方とお会いすることができて、『この間、こんなことがあったから気を付けた方が良い』とお話しして下さったり、『自転車気を付けて運転してね』と直接お声掛けができたり。会員さんたちと一緒にふっかちゃんの絵が入った啓発ステッカーやマグネットを作るのも楽しいですし、親子交通安全研修日帰り旅行では普通では入れないような場所を見学しながら県警の方々からお話しが聞けるんです。『母の会』で活動していることで、個人では体験できないような新しい出会いや楽しみを得られていると感じています」

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「安心安全」を地域全体に広げるために

深谷市で「母の会」が活発な活動を続ける背景には、より良い地域を創ろうとする人が多いことの他に、市民協働のまちづくりを目指す深谷市役所による、力強いサポート体制が整っていることが挙げられる。

「母の会」の事務局機能も市役所の道路管理課が担っており、多岐に渡る交通事故防止活動を常に支えている。

「どの活動も『母の会』単体で動くことはなくて、市役所の道路管理課の方々や警察と一緒に協力しながら活動をしています」

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時代の変化に合わせて

近年、子どもの交通事故死者数が減った代わりに、高齢者の死者数が全体の5~6割に上り、行政も高齢者を対象にした啓発活動を行うことが増えている。

時代の変化に応じ、「母の会」も高齢者向けの啓発運動に力を入れている。

「PTAのお母さん、お父さん方にも協力していただいて、ご近所の高齢者がいるお宅に個別訪問をしたり、警察の方と一緒に市内の各サークルや市民団体を訪問して講習会を開いています。特に、グランドゴルフの会に来られている方は自動車に乗って来られる方がほとんどなので、警察の方が交通事故現場の凄惨さをお話しして下さると、真剣に聞いて下さいますね」

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「携帯電話やカーナビが普及した時に脇見運転による事故が増えたように、これから自動運転車が一般的になれば事故の原因や性質も変わってくると思いますし、交通ルールが変われば啓発の仕方も対象も変えなければなりません。交通事情も日々変わっていくので、これからも地域の皆さまと、特に若い世代の方々と協力しながら、時代の変化に合わせた活動を続けていきたいと思っています」

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「地域貢献活動は人の為と思ってやっていましたが、地域のためにすることは巡り巡って自分や身近な人の為にもなっているんですよね。私自身だけでなく家族もまわりの人も一度も交通事故に遭わないでいられるのはそういうことかなと思っています」

2019年時点で、埼玉県内で起きた人身事故件数、負傷者数は9年連続で減少している。また、人身事故件数は1979年以降、負傷者数は1978年以降、過去最少となった。

その背景には様々な要因が考えられるが、日頃からの心掛けが防ぐ交通事故は、田口さんをはじめとする「母の会」の地道な啓発活動が、抑止力として大きく貢献しているはずだ。

より良い地域を創ろうと励む人と人、組織と組織が協働し、安心安全な地域を創る。
深谷市には、そんな風土が根付いている。

(文:高田裕美 写真:矢野航 写真提供:深谷市交通安全母の会)

<一般財団法人埼玉県交通安全協会>
http://www.saitama-ankyo.or.jp/

<深谷市の交通安全への取り組み>
http://www.city.fukaya.saitama.jp/kurashi/kurashi/doro_koen_kotsu/kotsuanzen/torikumi/1391416733563.html

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